株式会社八十二銀行 デジタルトランスフォーメーション部 調査役 山岸 和広 様
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90年以上にわたってお客様、地域の皆様を支援してきた八十二銀行。長野県のリーディングバンクとして、県下に130を超える拠点を持つ地方銀行です。お客様の事業展開を支えるべく、県外・海外にも拠点を展開しています。
リンプレスは、同行が目指す非IT人材が自ら課題の洗い出しやIT企画立案を実行し、DXを主導できる体制を作ることを目的として、2022年12月に「IT企画研修(インハウス)」を実施いたしました。
今回は、IT企画研修の実施に至った背景や今後の展望について、デジタルトランスフォーメーション部 調査役の山岸 和広様にお話を伺いました。
目次
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ーデジタルトランスフォーメーション部の概要を教えてください。
山岸様:
デジタルトランスフォーメーション部は出来上がってからまだ日が浅く、時代の変化に対応すべく2021年6月に立ち上げられた部署です。その後、2022年6月には企画部デジタル推進グループを吸収し現在のデジタルトランスフォーメーション部となりました。
主な役割としては、データやデジタルを最大限利活用し、中長期的な視点でビジネスモデルや組織風土の変革、それに伴う職員の意識改革などを担う部署となっています。
新しい事業を生み出すのもそうですし、既存の事業そのものを改革するということもそうです。
ただ、それを担うのは“人”であることには変わりがありませんので、その人の意識が変わり、必要なスキルを身に付け、そして活躍することでDXを進めていく、その下支えをするのが我々デジタルトランスフォーメーション部だと思っています。
ー山岸様の担当業務を教えてください。
山岸様:
私はデジタル人材育成担当という立場で業務を行っています。弊行には人事部という部署もあり、行内全体の人材の育成やキャリアの開発というのは人事部で担っているのですが、その中のデジタルの分野に関しては私が責任を持って担当しております。
ーリンプレスに依頼する前は、どのような課題があったのでしょうか。
山岸様:
弊行は数ある地方銀行の中でも特徴的なのですが、自社内にシステム開発部門があります。
そのため、新しいシステムを作る場合に外注するのではなく、事業部門が開発部門と一緒に企画立案して開発を進めています。
ただし、長年、社内でシステム開発を内製してきた結果、開発時の業務要件策定から業務所管部がシステム部へ任せきりになってしまうような傾向がありました。
また、年々、銀行の業務の幅や役割が広がっていくなかで、開発部門も企画する事業部門側も多忙になったこともあり、事業部門と開発部門の意思疎通がうまくいかなくなってしまっているという課題がありました。
具体的には、営業を推進する部門や業務を管理する部門など、各部門が必要なシステムを起案して開発部門に依頼し、開発部門がその意図を汲んで開発をしていくのですが、その中でしっかりと自分たちが何をしたいのかが伝えられない。
また、伝えたつもりであっても開発部門が事業部門の意図を汲みきれず、検討段階からもっと深く関与していかなければいけないということで負担が生じてくるようになりました。
結果的に開発に時間がかかる、当初予定していた期間よりも延びてしまう、開発しても手戻りが発生するというような状況でしたので、一つの仮説として上流工程側、つまり企画そのものに課題があるのではないかという結論に至ったのです。
ーそのような課題はいつ頃から出てきたものなのでしょうか。
山岸様:
弊部ができる前から、そのような課題があったと考えています。具体的にいつからというよりは、じわりじわりと明るみに出てきた課題だと言えると思います。先ほど申し上げたように、銀行の業務が幅広くなってきた中で徐々に人手不足になり、このような課題が露呈してきたのではないかと考えています。
実際に期限を超えてしまっている、手戻りが生じているというのは客観的に見てもわかる問題ですので、これについては経営側も問題意識を持っていました。
ーリンプレスのIT企画研修を導入することを決めた理由を教えてください。
山岸様:
改めて上流工程側にある問題について検討した際に、元々の目的の設定と、経営的な視点で論理立てて工程を組み立てることができていないのではないか、という仮説を立てました。
その仮説をもとに研修を検討する中で、リンプレスのIT企画研修では論理的に課題を整理しながら企画を進めるためのフレームワークに沿って学べることが分かりました。
具体的には経営的な視点で目標を立てることや、開発に入る前の論点整理として活用できるフレームが用意されていたため、こういった考え方を学ぶことが我々に今一番必要なことではないかと考えました。
ー最後の決め手になった部分は何だったのでしょうか。
山岸様:
情報収集した研修の多くはIT人材寄りのものが多かったのですが、弊行としてはどちらかと言うと事業部門側、つまり非IT人材にとって有益な研修を探していました。リンプレスの研修は非IT側の人材がIT側の人材の考えを汲み取るための研修内容となっており、その点は大きな決め手になった部分です。
ー実際に受講者の方々の反応はいかがでしょうか。
山岸様:
特に多かったのは「こういった考え方やフレームワークを活用することで、自分たちがデジタル・IT化を企画する際にやるべきことが体系的に理解できた」という声です。
実際に受講生の8割は研修の内容に満足しており、9割以上の受講生が実際の業務に役立つという回答をしてくれています。そのようなアンケート結果からも分かるように、非常に満足度の高い研修内容を実施していただいていると思います。
その中でも特に受講生からの評判が良かったのが「背景確認シート」(※1)です。1枚のシートの中で自分の考えを整理することで、現状を正しく認識することができました。また、あるべき姿を定め、問題点とニーズを捉えて、自分の取り組むべきテーマを明確に設定することが可能となったほか、決裁権限者等への説明もできるようになりました。
※1 背景確認シート(サンプル)
ー今回の研修では「背景確認シート」の添削も実施したそうですね。どのような反応がありましたか。
山岸様:
「背景確認シート」の添削を通して「自分では気付けなかった部分に具体的なアドバイスをもらえて非常に良かった」と声が多くありました。受講生も多かったのですが、その場で即座に添削をして戻してくれたので、聞いているだけの研修よりも学びが大きかったという声も多くありましたね。
ー他にはどのような声がありましたか。
山岸様:
IT分野に関わっていない人間からすると、要件定義という言葉も新鮮な言葉だったようです。要件定義には時間をかけてしっかりと考えなければならないというのはIT業界では当然のことだと思いますが、そのような認識がない非IT側の部門の人にとっては大きな学びになったのではないかと思います。また「要件定義を行う前に徹底した検討を行って要件定義に移っていくことが、結果的に効率的かつ満足度の高いものに繋がることを実感できた」という声もありましたね。
ー研修実施の効果を教えてください。
山岸様:
この研修を実施したことで企画側の考えが大きく整理され、企画そのものへの意識が変わったと感じています。弊行には各業務分野に企画セクションがあるのですが、企画に携わる人材がその後の工程を意識して目的に沿ってフローを組み立てられるようになった点は、とても大きな一歩だと感じています。
ー今後もIT企画研修を実施する予定はありますか。
山岸様:
現在、当行では合併を控えている関係で新たなシステムを開発するという案件は一旦セーブしています。しかし、統合を終えてから準備を始めるのではなく、この段階から準備を進めて力を蓄えていくために、今回実施していただいたIT企画研修は継続して実施していこうと考えています。
また、講師を務めてくださった方にはとても熱心に取り組んでいただき、一人ひとりの受講者に向き合って研修を進めてくださいました。そのような点も研修を任せる立場としては大変心強く、今後も継続してお任せしたいと考えています。
ー今後の展望を教えてください。
山岸様:
IT企画研修の対象となる本部企画担当者については、現在実施しているIT企画研修で上流工程と下流工程をしっかりと紐付けるだけでなく、データの活用も含めて、お客様目線での企画ができるように、継続して人材育成に取り組んでいこうと考えています。
また、AIの学習についてもより注力していく予定です。2023年秋にChatGPTを導入し、さらにデジタルトランスフォーメーション部のほかに、システム部の中でAI推進チームという特別チームも存在します。今後はAI推進チームと力を合わせて、AI活用の推進を行っていく予定です。
ー本研修はどのような会社にオススメでしょうか。
山岸様:
幅広い事業者様に受講してもらう意義のある研修だと思いますが、特にシステムの導入・開発を予定している企業であれば必要不可欠な研修だと思っています。我々のような銀行もそうですが、企画側や発注側が非IT人材であればあるほど、システムの組み立て方を理解する必要があるのかなと思っています。
また、この研修はシステム開発以外の企画業務全般にも役に立つフローを勉強できる研修です。業務の全体感をしっかりと捉え、思考を整理して推敲していく工程というのは、幅広い企業に役立つ思考プロセスだと考えています。そうした基礎スキルの研修としても、業種や業界を問わず幅広い企業におすすめできる研修だと思います。
(撮影・取材・文/小町 ヒロキ)
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